■風間旅人随想

これは何度か話したので覚えている人もいるとおもいますが、私が福岡市内でタクシーに乗ったときのことです。乗るとすぐにタクシーのラジオから流れてくるニュースのことで私は運転手と話をするのですが、その時は、乗って降りるまでにそんな長い時間ではありませんでした。5分か10分くらいの距離だったと思います。

そうそう、ちょうど夕方のニュースをやっていて、どこかの県知事が「100万円の賄賂もらった」ということで「捕まった」っていうニュースが流れたのです。

それを聞きながら運転手が怒っているのです。「わしらがこんなしてコツコツコツコツ一生懸命働いているのに、県知事だからといって100万ももらって」と怒っている。「ねえ、お客さん」と私に同意を求めるから、「そうだなあ」と思いながら、「でも運転手さんねえ」と私が突っ込んだ。「運転手さんにねえ、誰か『100万あげるよ。取っておいて。誰にも言わないから』と言われたら、運転手さん、受け取る?」と聞いた。しばし沈黙のあと、「ああ、受け取るなあ」と(笑)、言うのです。「一緒ですよ」と言ってあげた。「県知事と一緒のこと」と言ってあげた。うん。

それはまあ、その人が県知事だったから簡単に持ってくる人がいた、というだけで、タクシーの運転手に「100万やる」という場面はたぶんないかもしれないけれども、でも「どうする?」、「受け取る?」と聞いたら、「うん、受け取る」とはっきりと答えた。ちょっとは考えたけれども、ね。「『誰にも言わない』と言ったら、受け取るよね」と言ったのです。それっきりその運転手さん、「そうやなあ、受け取るよなあ」とつぶやくように言いながら運転していました。目的地に着いたので私はすぐに降りたのですが、あの運転手、きっとあの後も「受け取るよな」と繰り返したことだろうと思います。

ですから、そういう思いというものは、人間のこころの中に、二つの思いを持っているのです。表に出ないこころの裏側でいつも揺れているのです。

ここまでではありませんが、タクシーの運転手から私がよく声をかけられるのは、降りる時です。さりげなく領収書を二枚か三枚渡そうとするのですね。白紙の領収書です。「これ、あげるよ」と言いながら、ね。ま、これが、運転手さんができる一番、なんというか自分の気っ風のいいところを見せる場面なのかもしれません。

要するに、「それで勤務先に二重、三重のタクシー代を請求しなさい」ということで、タクシーの運転手が白紙の領収書をくれようとするのです。

「いや、私いらない」と断ると、「いや、遠慮しなくていいよ。これ別に」という。「こっちが調べられるわけじゃないし」と言いながら、思いっきりの親切のつもりです。

私は「いや、いらない」とまた断る。すると、「なんで?」と聞かれる。「私、会社やっているんだ。社長やっているんだよ」って言ったら、「ああそう。すまん」と(笑)、そんな感じで言うのですが、そういうのも、フッとやっぱりこころの中で思ってしまうのですね。そうしたからといって、運転手の彼は自分のプラスになるわけでもなんでもないのだけれども、「会社からそれくらいくすねちゃえよ」という、そういうことをフッと仕掛けるのです。ありますよ。まあ、二枚、三枚はしょっちゅうです。(著書『お金の魔力に魅了されないための8ヶ条』より)

一月に発表した今年の時流鑑定の中に「不動産の取引では、不正に巻き込まれないようにすること」というのがあります。

不動産の取引では、表と裏が顕著に表れては消えます。政治も、金融も同類かも知れません。経営の現場も同じかも知れません。不正が起こるのは裏で悪意が横行するからです。裏に善意が満ちれば不正は起こりえません。裏の見えない部分で黒い思いをしないこと、黒い思いに乗らないことです。念いを正すことです。我が不動産会社ピアレックスが「名門を目指す」と宣言するのは、表も裏も真っ白で貫く決意だということです。
(西)